介護事業者の倒産が過去最悪ペース

介護関連

人手不足と物価高が追い打ちをかける

今、介護業界が深刻な危機に直面しています。2024年1-4月の「老人福祉・介護事業」の倒産件数が51件と、前年同期比45.7%も増加し、過去最多を更新したのです。

この51件の内訳をみると、訪問介護が22件と最も多く、次いで通所・短期入所介護が19件、有料老人ホームが5件、その他が5件となっています。特に身近な介護サービスである訪問介護と通所・短期入所介護の2業種で合計41件と、全体の80.3%を占めています。
倒産が増加した背景には、人手不足と物価高の影響が大きいと考えられます。

人手不足の問題

まず、人手不足の問題です。2024年3月時点の「介護サービス職業従事者」の有効求人倍率は3.70倍と、職業計全体の1.17倍を大きく上回っています。他産業では5%を超える賃上げが相次ぐ中、介護職の待遇改善は追いついておらず、人材流出が深刻化しています。
さらに、コロナ禍の影響で利用控えや感染防止対策などのコスト増加も重荷となっています。
その後、コロナ関連の資金繰り支援効果で倒産が一時的に抑制されていましたが、支援の縮小に物価高が重なり、経営環境は厳しさを増しています。

2024年の介護報酬改定はプラス1.59%と小幅で、介護職員のベースアップも2.5%にとどまっています。他産業との賃金格差が広がる中、介護事業者は人材確保に苦戦を強いられ、倒産増加に直結しているのが実情です。

2業種が大きな打撃

特に、訪問介護と通所・短期入所介護の2業種が大きな打撃を受けています。
これらは利用者に身近なサービスであり、人手不足とコスト増加の影響を最も受けやすい分野だと言えるでしょう。
このペースで推移すれば、2024年上半期(1-6月)の介護事業者の倒産は、これまでの最多だった2020年の58件を上回ることが確実視されています。
介護業界の淘汰が急速に加速しているのが現状です。
介護需要は今後も増え続けると予想されますが、人材不足と経営悪化が深刻化しています。介護事業者の倒産が続けば、利用者の生活に大きな影響が出る可能性があります。

政府は介護職の処遇改善に取り組んでいますが、他産業との賃金格差を縮小させるには至っていません。介護業界の持続可能性を高めるには、抜本的な対策が求められます。

高齢化が進む日本

介護サービスの安定供給は、高齢化が進む日本にとって喫緊の課題です。介護事業者の経営基盤を強化し、人材確保を図る必要があります。
そのためには、介護報酬の大幅な引き上げや、人材確保に向けた抜本的な施策の実施が不可欠でしょう。

介護業界の再生なくして、高齢者の尊厳ある生活は守れません。政府には、介護事業者を支援し、介護サービスの質の向上と安定供給を実現してほしいと願っています。

 

 

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