~厚労省・経産省・こども家庭庁とのレクチャーを受けて~
先日、私が所属する「政治と介護を紡ぐ会」において、厚生労働省・経済産業省・こども家庭庁の各担当者をお招きし、現在国で検討が進められている「家事支援国家資格(仮称)」についてのレクチャーおよび意見交換会が行われました。
今回の制度は、まだ正式名称すら確定していない“これから生まれる国家資格”です。
しかし一方で、すでに国の成長戦略の中へ位置付けられており、2027年秋頃には国家資格試験の開始を目指す方向性まで示されています。
制度としてはまだ極めて流動的でありながら、国家プロジェクトとしては既に走り始めている。
それが今回、私が最も強く感じた印象でした。



なぜ今、「家事支援」が国家資格化されるのか
政府資料では、制度創設の背景として次のような社会課題が示されています。
◆ 出産・育児による離職者は年間約15万人
◆ 介護・看護による離職者は年間約11万人
◆ 少子高齢化による労働力不足
◆ 共働き世帯の増加
◆ 介護人材不足の深刻化
特に政府は、「家事負担」が女性や介護世代の就労継続を阻害している点を問題視しています。
政府資料では、
◆ 第一子出産後の女性継続就業率を2030年までに80%へ
◆ 介護をしている方の就業率向上
というKPIまで設定されています。
つまり今回の制度は、「福祉制度」というよりも、
“日本全体の労働力不足対策”
としての側面が非常に強い制度だと言えます。
家事支援資格とは何をする資格なのか
現段階では、制度設計の多くが「検討中」とされていました。
私達から、
◆ どのレベルの掃除・調理技術を求めるのか
◆ 介護資格との違いは何か
◆ ベビーシッターとの棲み分けはどうなるのか
◆ どの層をターゲットにするのか
◆ 資格取得に必要な費用や期間はどうなるのか
など、現場目線から質問を行いました。
しかし率直に申し上げると、明確な回答が出た項目はまだ多くありません。
今回の説明では、
「介護福祉士や保育士の上位資格ではない」
「業務独占資格ではなく名称独占資格を想定している」
という方向性が示されました。
つまり、
“この資格がなければ仕事ができない”
というものではなく、
“家事支援の一定技能を持つことを国が認定する資格”
という位置付けに近いようです。

介護業界が感じている「大きな不安」
今回、介護業界の関係者が特に注目しているのは、
「介護保険制度との関係性」
です。
現在、訪問介護には「生活援助」というサービスがあります。
掃除・洗濯・調理など、日常生活を支える重要なサービスですが、国は以前から介護保険財政の圧迫を課題としており、
「軽度者向け生活援助を保険給付から切り離すのではないか」
という議論が長年存在してきました。
そのため今回の家事支援資格についても、
“将来的に介護保険サービスの代替として使われるのではないか”
という警戒感が現場には存在しています。
もちろん、今回のレクチャーでは政府側から「そのような目的ではない」という説明はありました。
しかし制度設計がまだ曖昧な以上、現場としては慎重に見極めていく必要があります。
「資格を作っただけ」で終わる危険性
今回、私が特に問題提起したのは、
「資格取得後の受け皿」
です。
仮に来年、この資格を取得した方が現れたとして、
◆ どこで働くのか
◆ どんな業務を担当するのか
◆ どの産業へ繋がるのか
◆ どの部署が案内するのか
が、現時点ではほぼ決まっていません。
これは非常に大きな問題です。
介護なのか。
子育て支援なのか。
家政サービスなのか。
ハウスクリーニングなのか。
就労支援なのか。
制度の対象範囲が広すぎるため、逆に“誰が責任を持つのか”が曖昧になっています。
私は今回、
「せっかく国家資格を創設するのであれば、資格取得者が混乱せず働けるよう、自治体やハローワークとの連携準備を今から進めるべきではないか」
という提案を行いました。

横須賀市として今後必要になる視点
今回の制度は、まだ完成していません。
しかし逆に言えば、
“今だからこそ地方現場の声を届けられる”
段階でもあります。
横須賀市は、
◆ 高齢化
◆ 介護人材不足
◆ 共働き世帯増加
◆ 外国人材活用
◆ DX推進
これら全ての課題を抱える都市です。
だからこそ、この新制度を単なる「新資格」として傍観するのではなく、
◆ どう活用するのか
◆ どう混乱を防ぐのか
◆ どの産業と繋げるのか
◆ どう地域課題解決へ活かすのか
を今から考えていく必要があります。
最後に
今回のレクチャーを通じて感じたのは、
「制度が生まれる瞬間」
に立ち会っているという感覚でした。
まだ曖昧な部分も多く、懸念点も少なくありません。
しかし同時に、
◆ 介護
◆ 子育て
◆ 雇用
◆ 外国人材
◆ DX
といった日本社会の複数の課題を横断的に考える、大きな転換点になる可能性も感じています。
今後も引き続き、現場の視点を大切にしながら、横須賀市として何が必要かを注視し、提言を続けてまいります。
横須賀市議会議員:ひろなか信太郎